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イザミカSSブログ。

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「Triangular」サンプル

人が溢れ返る東京では、人の数だけ情報が存在している。否、人の数以上に情報が溢れ返り、そこから押し出されて落ちたものが街の片隅に追いやられ、廃れていき、誰も知らない情報として捨て去られたりもしているのだろう。
 忘れ去られた情報になど、誰も見向きしない。そんなものがあることにすら気付かない。そんな人間達の中、忘れ去られた情報に気付き、拾い、繋ぎ合わせ、新たな情報として蘇らせることのできる人間がいる。
それが情報屋だ。
得た情報を金に換え、人を貶めることも救うこともできる。錬金術師のようでもあり、神のようでもあるそんな芸当は中々出来ない。精神的にも、肉体的にも秀でていなければ到底務まらない。他人の情報を扱うということは、誰かしらの不利益に繋がる。不利益に繋がった誰かからの報復という危険が常に近くにあり、そしてその危険は情報を扱えば扱うだけ増えていく。
だから誰にでも出来ることでも、耐えられることでもない。報復を恐れず、情報の網を広く張り巡らせ、顧客を増やしていくのは生半可なことじゃない。しかしそれを成し遂げ、有名になった情報屋がいる。新宿のオリハラと呼ばれる人物だ。
新宿を拠点にしつつも、彼の手広さは群を抜いており、暴力団系との繋がりはもちろん、大企業とのパイプも持っていて、その大企業伝いに広がった情報の網は海を超え、海外にも存在しているという。ただしそれは噂でしかなく、事実かどうかはわからない。オリハラのまいた「嘘の情報」かもしれないからだ。しかし嘘とは言い切れないだけの手腕と網を持っているのは事実だった。
そんな彼とは別に、最近名を広めている情報屋がいる。一年半前に突然現れ、新宿のオリハラと同等の情報網を持ち、いたる所に独自のパイプを張り巡らせているのに、その姿を見た者が一人もいないという奇妙な情報屋だ。姿を見た者がいないのに、どうして存在していると言いきれるのか。それは、その情報屋は自らの姿を出さずにいられる場所―――すなわち、ネットの世界を拠点にしているからだ。
最初はネットの口コミから存在を匂わせ、そしてその存在に気付いた者の何人かに情報を提供し、そこから芋づる式に己の存在を広めていった。知る人ぞ知るメールアドレス。それが全てだった。
しかしメールアドレスだけが存在証明というのは、あまりにも不安定すぎる。本当にネットの向こうにちゃんと存在しているのかも怪しい。そう思う人間がいるのも当然であり、それを想定しているからこそ、その情報屋はメールアドレスを知った相手……つまり依頼主と、チャットや音声通話を使って直接会話を交わし、情報を渡しているのだ。
最初は半信半疑だった者達も、間違いのない情報や限りなく早く情報を集めるその手腕にどんどん信頼を寄せていく。そして情報を求める側だった輩が、その情報屋を信用するあまり提供側に回ることが増えていき、結果として情報屋がリアルの世界に姿を現さずとも、リアルの世界の情報を集める「耳」「目」「手足」が無尽蔵に増えていった。
裏の世界でもその名は知られるようになり、新宿のオリハラと肩を並べるまでとなったその情報屋は、「池袋のミカド」と呼ばれている。
情報屋本人が「ミカド」と名乗っていること、初めてその情報屋が現れ、情報を集めたと見られる場所が池袋であるという噂からそう呼ばれているのだが、本当の名前は誰も知らない。ミカドという情報屋が本当に池袋に住んでいるのかもわからない。性別も年齢も、何もかもが謎のままだ。
そんな二人の情報屋は、別に激しく対立しあっている訳ではない。かといって協力し合っている訳でもない。敢えて定義づけるならば、二人の情報屋は共存という状態にあった。時には利用しあい、時には対立しあい、時には協力しあう。密に連絡を取り合っている様子はないが、お互いがお互いの動向をある程度把握しているらしかった。
かつて新宿のオリハラと池袋のミカドの両方を知る人物が、それぞれにこう尋ねたそうだ。「どうしてお互いの動向を知っていながら、商売敵でもある相手を潰そうとしないのか」と。
それに対しオリハラもミカドも、笑って同じことを言ったという。



「その方が面白いでしょう?」と。



冒頭部分です。
新宿のオリハラと池袋のミカドのお話。原作展開の2年後位を想定しています。

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